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CrossOver__04 |
とりあえず、ヒュージマテリアとかいうものを、クラウドたちは集めている最中らしい。 この世界に満ちるライフストリームの結晶、それがマテリア。 そのマテリアのなかに、極稀だけれど、通常よりも大きなものが生まれるという。――それがヒュージマテリア。 神羅、とかいう団体が、それを集めてメテオにぶつけようとしているんだそうだ。 で、クラウドたちは、それを阻止するために彼らと対抗して奪い合いを展開している最中だそう。 ……もっとも、これまでの2回、奮闘してきたのは、意識の欠片をイヴァリースに飛ばしてたクラウドを除くメンバーだった わけなのだが。 気持ち悪い。 ジュノンとやらいう街から海底魔晄炉って場所に入り込んだ、わたしの第一印象はそれだった。 右を見ても左を見ても、四方八方金属まみれ。地面の露出した部分なんぞ一切なし。 ガラスのドームの外には、海がある。ここが、海底魔晄炉と呼ばれる所以だ。 人間が、まさか海中にまで進出しているなんて、ここに来るまでわたしには想像もつかなかったことだ。それを異常と考える わたしの方が、おそらくこの世界では異端だろう。 ……いいけどね。別に。 そうは思うけど、少しだけ心に穴が空いたような気分に襲われる。 自分が立つべき場所、歩くべき世界。イヴァリースに焦がれる気持ちの、行き場がなくて。 それを誤魔化すように、わたしは動く。 かつてのクラウドのように。 彼らに助力することが、帰還への道標になると信じて――いや、信じざるを得ないというか。 ……いいけどね、別に。 今はそれだけが、このわたしの標だ。 「な、何者だキサマッ!?」 マテリアなしで発動させた魔法をくらった兵士が、のけぞりながらそう叫ぶ。……意外と耐久力がある。あの、なんだか頑丈そうな鎧のせい? だけど隙が大きい。 手にした銃器に頼りすぎているのか、接近戦への動きはぎこちない。 「何者だ、って、云われてもね――」 のけぞった懐に飛び込み、剣の腹を兵士の顎へ。下から上に伸び上がるように叩きつけた。 がっ、と、くぐもった声とともに、兵士はそのまま白目を向いて昏倒する。 背後と横で、ほぼ同時に、床に崩れ落ちる音。 視線を向ければ、ちょうど、クラウドとヴィンセントがわいて出たモンスターを絶命させたところだった。 「無事か?」 感情のこもらない声でそう問われ、わたしは軽く手を振って応える。 目深に巻かれた赤い額布と、口さえ覆い隠す赤いマントは、まさに表情を隠すのにうってつけである。 ……目を見れば、感情の動きの大まかなところは把握できる、というのが通説かもしれないが、ことヴィンセントに関しては、どうにもこうにも。 目に宿る色は絶望と闇だし、口調だって平坦そのもの。 良くも悪くも、ポーカーフェイスという点で、彼に勝てる者はいないような気がする。 「よし、行くぞ!」 そんな彼と対照的に、大剣を振り上げてわたしたちを促すのは、クラウド。 少し離れた場所で、倒れた兵士の懐からマテリアを強奪しているユフィ。……見なかったことにしよう。 この4人が、今回、ヒュージマテリア争奪に参加したメンバーだ。 他の人たちは、万が一のことを考えて、ジュノンに待機している。 万が一、とは、わたしたちがヒュージマテリアを奪還できず、神羅に逃げられた場合だ。 ……とはいうものの、こんな海底から、どうやって逃げるつもりなんだろう。船なんてあるわけないし、まさか、反対方向に通路を組んでいるわけもあるまいし。 そんなささやかな疑問を抱きつつ、また、途中で大きな機械の腕がヒュージマテリアを運搬するのを見て驚きつつ(わたしだけが別の意味含む)、とうとう最深部と思しきところへ一行は辿り着いた。 先刻見た機械の腕が、ヒュージマテリアを赤い乗り物に積み込んでいる。 それを眺めているのが、入り口近くに立つ、赤い髪の男。……微妙に逆立ちまくった髪が、赤チョコボを思い起こさせる。 「よおっしゃ間に合ったぁ!」 ユフィが大きな声をあげ、それを耳にした男は、やけにゆっくりと振り返った。 「何してる、と。おまえたちも積み込みを――」 云いかけて。 ぎょっ、と、目を丸くした。 「クラウド!?」 「ヒュージマテリアの運搬なら、俺たちに任せてもらおうかッ!」 「……あなたのご希望の場所にはきっと、届かないでしょうけどね」 大剣振りかざして突貫するクラウドにつづいて、わたしも地を蹴った。 が、 「ッチ!」 懐から、ロッドのような獲物を取り出した男が、それを横に一閃した――刹那。 「!?」 一気に空気が変質したことを感じて、わたしは腰を落とした。そのまま、慣性の法則で地をすべる。 そうして、その頭上を、おそらくはサンダガくらいはありそうな電撃が通り過ぎていく。副産物の静電気で、髪が引っ張られるのが判った。 仕組みなど理解出来るものじゃないが、今のロッドが電撃を発生させたんだろう。 振り返れば、クラウドは大きく飛びさがって、電撃から避難していた。 前に滑り込んだわたしと、かなり距離が開いている。……あまつさえ、その間には、電撃の男が立っていたりするんだけど。 ……ちょっと、判断間違えたかもしれない。 いい方向に考えるなら、挟み撃ちって図式が成り立つのだが、イヴァリースで一緒だったクラウドはともかく、昨日今日一緒になったばかりのユフィやヴィンセントとそこまで連携が出来るだろうか。 「レノさん!」 一瞬考え込んだわたしの背後から、兵士のものらしき声。 「ヒュージマテリア、積み終わりました!」 「おう、と!」 振り返り、レノと呼ばれた電撃男が応じる。 すぐに動くかと思いきや、その視線は、ちらりとわたしに向けられた。 いぶかしげに寄せられた眉根は、心当たりのなさの表現だろう。――まあね、結構長いこと神羅とクラウドたちは悶着してた んだろうし、そこに新顔が出てくれば、不審にも思うわよね。 「クラウド、このおネエちゃんはどちらさんだ、と?」 「おまえに話す義理は――「よ」 強い口調で返そうとしたクラウドが、とたんに気勢をそがれた表情になる。 いいじゃない、別に、名前くらい。 イヴァリースと違って、呪術の類は発展してないんだし。 ははっ、と、レノは相好を崩す。 痩せ型で三白眼気味の、お子様には不人気そうな顔つきではあるが、笑うと結構愛嬌が出るものらしい。 「いい性格してるな、と。あんたもクラウドの仲間か、と?」 「非常に微妙な答えになりそうだから、それはパスさせてくれる?」 そう答えると、レノは声を立てて笑い出す。 赤い乗り物の入り口らしき場所から、切羽詰った顔で見ている兵士は、果たして彼の視界に入っているんだろうか。 まだ声に笑いの名残を残しながら、彼はしげしげとわたしを眺めて云った。 「惜しいな、と。――うん、実に惜しい」 こんな状況じゃなかったら、うちに勧誘してみたいくらいだぞ、と。 「レノさんっ!」 「だが、今はヒュージマテリアが最優先だ、と!」 痺れを切らした兵士の声と同時、レノが動く。 その進行方向にいたわたしとしては、やはり、足止めするしかないのだが――しても、ヒュージマテリアは背後の乗り物だ。兵士達が待機してるのは、レノが指揮官だからだろう。 レノ当人を足止めしても、彼が命令すれば、乗り物は動くだろうし。 気乗りしないまま繰り出してみた剣は、あっさりとロッドで弾かれた。 「見ない剣だな、と。おネエちゃん? ――あんたはいったい何者だ?」 「云ったでしょ。よ。この世界では、それ以外の何もないわ」 一瞬のやりとり。 直後、互いの勢いを利用して、わたしとレノは距離をとる。その間にクラウドたちが攻撃を仕掛けようとするが、 ごおん、と。 重く鈍い音を立てて、彼らの背後で何かが動き出していた。 |
04きました。 完璧に続きものになってきてます。どうしよう。 レノさんとは朗らかに殺伐と出来そうで、会話させてて楽しかったです。 |