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CrossOver__07 |
ゾディアークの余波を受け、こちらの潜水艦も、海のなかをきりきりと舞う。 衝撃以外の影響はないため、クラウドが必死になって立て直そうとしてるのが成功すれば、また落ち着くだろう。 だー、とか、わー、とか。 ユフィや捕虜にした兵士たちの叫び声が聞こえるが、反応してやる余力もなかった。 「! やりすぎだっ!」 「やかましい。あんただって止めなかったでしょうが」 ゾディアークでやつらを蹴散らす、という案を出したとき、クラウドはあっさり頷いた。 そんな彼に、わたしを非難する権利はないと思う。 魔力をほとんど消費して、わたしはそのまま床に身体を投げ出した。ずり、ずり、と手で這って、壁に寄りかかり、腰を落ち着ける。 「……クラウド。こっちの方向」 「え?」 腕を上げるのさえ億劫だったけれど、わたしはなんとか、それを成した。 唐突な指示に、クラウドはきょとんとこちらを振り返る。 「大きな命の欠片の……鼓動かな? そんなのが聴こえる。……無事みたいね、ヒュージマテリア」 ゾディアークでも壊せないものがあるなんて、思わなかったわ。 わたしは軽く肩をすくめて、そう云った。 いや、むしろ、壊さなかったのだろう。 召喚獣は命あるモノたちだ。それぞれの、意思を持つモノだ。 喚び出した相手が何を欲しているかぐらい、彼らはいつも、驚くほど容易に察している。 ……もっとも、そのとおりに動いてもらうには、それなりの実力が必要なわけだけど。 ま、わたしはちょうど、その条件に当てはまる相手だったということだ。 ぱあ、とクラウドの表情が輝く。 「よし」とつぶやいて、操縦桿を握る手に力を込め―― 『神羅潜水艦部隊全機、応答せよ』 「は?」 不意に、どこからとなく流れてきた第三者の声に、首をかしげた。――わたしたち全員含め。 「神羅の通信のようだな」 くぐもった声で、ヴィンセントがそう云った。端に転がったままの兵士たちが、こくこく頷く。 「シルフに、遠距離の相手との会話の橋渡し頼むようなものかしら?」 「まあ、そうかもな。橋渡すのは、シルフじゃなくて電波だけど」 つぶやいたわたしのことばに、こちらはクラウドが律儀に答えた。 わたしは、この世界の常識ってものに相変わらずうといけど。なんとなく、どんな感じなのかは判ってきた気がする。 そんなわたしたちの会話を遮り、再び、通信とやらが届く。 『どうした、2号機。応答せよ』 「……2号機って、もしかして、コレ?」 潜水艦追いかけっこの興奮が過ぎ去ったあと、ユフィの顔色は格段に悪くなっていた。 今も、床に座ったわたしの横、カタカタ震えて腕にしがみついている。 そんな彼女の問いと視線に、神羅兵たちは、またも首を上下させた。 「応答したら?」 「返答せねば、不審に思われるだろう」 「そうだな、やってみる」 パチパチパチ、と、クラウドが連続して手元のスイッチを押した。 それから、傍のマイクへ口を寄せ、 「こちら神羅2号機、異常なし」 『了解』 ……ていうか、他の潜水艦ども、わたしが一掃したんだけど、そいつらからの応答がないの、不審に思われてないんだろうか。 それとも、通信機能ってのがあるのが、この艦だけとか? 首をかしげるわたしを、ユフィが不思議そうに見た。 『次のミッションを伝える』 だが、そんな疑問など知ったこっちゃないとばかりに、通信機からの声は、さっさと話を進めている。 『全機、すみやかにジュノンドックに帰航せよ。ヒュージマテリアをエアポートより搬出する』 作業のないものは警備にあたること。以上、通信終了。 「ジュノンドック……エアポートか」 「急げば間に合うかもしれんな」 クラウドのことばに、ヴィンセントがそう補足した。 「よし、こちらのヒュージマテリアの捜索は後回しだ! 浮上して、エアポートのヒュージマテリアを奪回する!」 そう、勇ましく叫んだクラウドだったけど。 相変わらず顔色悪くて、相変わらず身体が小刻みに震えていた―― ということを、とりあえず、わたしは彼の名誉のために口にしないでおいた。 イヴァリースに帰ったら、絶対ラムザたちにばらして大笑いしてやろうと心に刻みつつ。 |
07です。まだ続いてます。 乗り物酔いのふたり、やっと地獄から脱出出来ます。 |