BACK

ご指名です


 異端者として追われつつも、のんびりしようと思えば出来る。
 何せイヴァリースは広い。
 騎士団や協会の目の届かない場所なんて、そこかしこにあるものだ。

「――自画自賛だけどさ、僕、それなりに強くなったよね?」
「そうねー。いつかピーピー泣いてたお坊ちゃんからは考えられないくらいよね」

 その一例である、裏路地のさらに奥に入り込んだ、ちょっと廃れた酒場に、情報収集も兼ねてわたしたちはやってきていた。
 相変わらず酒場でミルクを頼むラムザは、店主との話が一段落したとき、ふと思い出したように口を開いたのである。
 そしてわたしは、笑ってそれに頷いてみせた。
 実際強くなっているのだから、否定する理由もないし。
「でね、
「何?」
「僕はベオルブ家なんて継げないけど、結構お買い得かなーと思う」
「……わたしとしては、むしろ継いだらどつきたい気分だけどね」
 で、そういうこと訊くっていうのは何?
 もしかして、口説きたい子でも出来たわけ? シスコン気味坊ちゃん。
 わたしのことばに、ラムザは怒るでもなく、むしろはにかんだような笑みを浮かべた。
 をを。図星?
 手塩にかけた子供が巣立つような感じで、ちょっと寂しいけど。
 異端者扱いのラムザでもいい、って人が現れたのは、よろこばしいことである。

「――そういうわけなんだけど、。口説かれてくれるよね」

「・・・ちょっと待て。何よその確信に満ちた物云いは」

 っていうか御指名わたし?

 うん。

 爽やかに笑って頷くラムザに、わたしがどう答えたかは――とりあえず、内緒の方向で。


 だけど。

〜♪」
「ああしつこいわねこの色ボケリーダ――――――っ!!」
「熱いなぁ、おまえら」
「あーあ、俺、狙ってたのになぁ」

 その日を境に何かっちゃあくっつきだしたラムザのおかげで、すぐにメンバー内ではバレバレになるのであった。
 ……早まったかな、これ。

 でも。


「何よ」
「・・・大好き」
「……はいはい」

 擦り寄ってくるお坊ちゃんを無下に突き放せないわたしにも、原因はあるのかもしれない。

■挿絵も見る?■



■BACK■



タイトル候補は『異端者の恋人』でした。ぐは(砂吐き)
風水士の女の子は描いていて楽しいです。しあわせ。
あの髪のふわふわとか...
うちのラムザくんは、何気にしたたかに人生を過ごしているようです。