ゾルディック家のお客さん イルミvsちまちゃん編
「イルミさんは、うん、猫みたいです」
「ふーん」
「で、キルアくんも猫みたいです。兄弟だからかなあ」
「へえ」
じゃあミルキは?
何気なく発した問いに、少女はぴっきり固まった。
ゾルディック家の客間でお茶を頂く彼女は、ここ近年で見れば非っ常ーに珍しい、友好的関係でもって試しの門をくぐるお客様。
たまたま帰宅していたイルミ、迎え入れてお茶を同席。
そしてなんでもない世間話の流れが、ただ、そこにいったというだけのこと。
目を泳がす少女。
頭に何が浮かんだか、イルミには一目瞭然だった。
「ぶ」
「わー! だめですイルミさん! それは悪口になるんです!」
「そう?」
「はい」
首をかしげて再度問えば、彼女は真顔で頷いた。
……初めて逢ってから一年は経つのに、ちょっと気を揺るがすと出てくるこのかしこまった態度、実はあんまり好きじゃない。
だけど突っ込めばまた固くなるだろうから、話はずらさずもとのまま。
「でも事実だし」
「いえ! きっと他に何かぴったり来るようなものが」
「何? 云ってみて」
「ものが……、えと、もの、が」
脂汗。冷や汗。どっちでもいいか。
両手でカップを抱きこんで、真剣に少女は考え出す。
「…………」
「…………」
沈黙は嫌いじゃない。
音をたてないのはいつもの癖。喉を潤したカップを戻す。無音。
「…………と、トド、とか」
弱々しくつぶやく少女の額を、ぺちんと音立てて指で弾いた。
「変わってないし」
「ごめんなさいミルキさん」
ちょっぴし痛かったらしく、涙目でしょぼくれる少女の額は、今度は叩かれることなく、ふわふわと撫でられていたのだった。
たぶんイルミは好意を持つ相手ほどいぢくりすぎてダメにするタイプだ(偏見)