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天魁星VS青雷&熊連合軍 |
デュナン湖ほとりにある、同盟軍の本拠地。 の、一階にある施設のひとつに、酒場がある。 女将であるレオナが切り盛りしていて、なかなかの賑わいを見せていた。 その片隅では、赤と青と黄色が揃って飲酒中である。 赤は云わずと知れた有名人、3年前にトラン共和国を打ち立てる礎となった英雄、・マクドール。 青はこれまた云わずとしれた、青雷のフリック。 黄色は天魁星拾い運抜群の、熊――もといビクトール。 3年前を懐かしんでの集まりだとしたなら、とりあえずは、相応な顔ぶれだった。 が、 「だから悪かったって云ってるだろ? いい加減勘弁してくれよ」 ほれこのとおり! パン!とビクトールが両手を合わせて、を拝む。 とても懐かしむ会をやっているとは思えない。実際そうなのだが。 「フリック、おまえも謝れよ」 「を無理矢理引っ張っていったのは、おまえだろう。俺は知らん」 「殺生な奴だな〜」 「事実だしな」 「どっちも、僕にとっては一緒だけどね」 砂漠で通りすがったをかっさらって、傭兵隊にそのまま引き込んだのは同罪。 かなり度の強い酒を片手に、にっこり微笑む元天魁星はコワかった。 思わず黙り込んだふたりを目の前に、はさらに追い打ちをかける。 「しかも何、見せてもらったけどあんなちまっちい砦でハイランドと渡り合うつもりだったのか? そりゃ、あっという間に焼け落ちもするさ。しかもだ。よりにもよってがいるときにルカ・ブライトの強襲受けたってんだから。これでがあのとき怪我してたら、今おまえたち生きてないよ?」 わざとらしく右手をちらつかせ、いつでも裁いてやるぞと言外に云いながら、にっこり微笑んでのセリフである。 どうやったらこの悪魔から逃れられるかと、フリックとビクトールは必死で考えようとした。 が、天はまだ、ふたりを見捨ててはいなかったらしい。 「!」 こんな処にいたの!? 酒場の入り口を元気よく開け放ち、曰く『熊と青二才につれてかれた』が姿を見せたのである。 「あー、昼間からお酒飲んでるし。未成年のくせに」 「そんなこと云ってたら、不老なんだからいつまでも未成年じゃないか」 酒を取り上げようとしたから防御しつつ、が笑う。 さっきまでの剣呑な気配はどこ行った? が、そこはが一枚上だ。 「実際年齢も未成年でしょ! ほら諦めて渡す!」 「はいはい、判りました」 「よろしい」 両手をあげて『お手上げ』ポーズをつくったから、酒の入ったカップをどかし。 代わりというのか、レオナにジュースふたつを頼んで、がの隣に座る。 「で、何話してたの?」 「あー、聞いてくれ。こいつひどいんだ」 「バッ・・・ビクトールやめとけ!」 「なんでだよ?」 「・・・・・・」(にっこり) 血相変えて止めにかかったフリックに、不思議そうな表情になったビクトールだったが、視界にがちらりと入った瞬間、きれいに冷却された。 さしもの彼も命は惜しい。 ソウルイーター持ちに右手ひらひらされながら笑みかけられて、平常心でいられる奴が果たしているのだろうか。 いやいるまい。(反語) いやいる。(更に反語) 「あーもう、何仲間を脅かしてるかな」 べしっ、と、の頭をはたいて。 他の人間がこんなコトやったら、裁きまでとはいかなくたって死の指先くらいは頂ける行為だ。 「どーせ、わたしが傭兵隊に無理矢理つれてかれたコトでも云ってたんじゃないの?」 正解である。 うんうん頷くふたりを見て、得心顔の。対照的に、苦々しい顔になる。 「そりゃあ連絡しなかったのは悪いと思ってたけどさ、一箇所に留まってない人に、どうやったら連絡が取れるつーのよ」 「バナーの村で待ってたんだけど?」 「わたしは、別れたときにはそんなコト聞かなかったよ」 「・・・・・・グレッグミンスターの僕の家に手紙とか」 「いつ読むか判らないのに出してられますか」 だいたい、ハイランド軍に顔知られちゃって、おおっぴらに表で人探しするわけにいかなかったし。 とが云い、『顔を知られる』原因となった傭兵隊主格ふたりは、やっぱり目をお魚にする。 ルカ・ブライトの強襲のとき、は最後まで残って出来る限り皆を逃がした。 それが仇になって、ルカのみならずシードやクルガン、故ソロン・ジーにまでばっちり覚えられてしまった経緯があるが、とりあえず、それは別のお話。 「いいじゃないのさ、別に」 ようやっと届いたジュースを、ひとつ、に押しやって。 両手でコップを包み込み、口元に持っていきながらがにこりと笑った。 「また逢えると思ってたし、実際に逢えたんだから」 ね? 「・・・そうかも」 そうだな。 とうとう苦笑して、が全面的に降参する。 「おお、勝った」 「さすが」 横のギャラリーふたりをじろりと睨んで、まだジュースを飲んでいるの手を、構わずにとった。 「?」 「もっと、ゆっくり出来るところに行こう」 酒は美味いけど、周りがうるさい。とくにそこのふたりが。 最初にココにいたの、じゃないか。 そう文句を云いながら、が笑って立ち上がる。 レオナに酒の代金はあのふたり、と、ちゃっかりツケて行くふたりを見送って、フリックとビクトールは大きくため息をついた。 「・・・助かった」 「やっぱの傍にはおいとかないといかんな」 何やらかすか判りゃしねえ。 「ならもう、二度とやるな」 今度僕の許可なしにを連れて行くのなら、裁きの十回や二十回、百回千回、覚悟しておけよ? 入り口でくるりと振り返り、本日最大の笑顔を浮かべた元天魁星のそのことばに、またもふたりが氷柱と化したのは、 ・・・云うまでもないかもしれない。 |
2の時間軸で、坊ちゃん夢。 |