Episode33.


「よかねえだろ」

 ちょっと目つきの悪いお侍さんが、いきさつを聞き終わったと同時に呆れたようにそう云った。
 クロロさんとこの人たちのなかで、まだわたしが逢ったことない残りの人たちが、今日、集合してる。名前はもう教えてもらった。お侍さんがノブナガさん、胸がばーって開いた服の女の人がパクノダさん、眼鏡のお姉さんがシズクさん。昔話で読んだ気がする、ええと、キジムナーだっけ? なんかそんな感じの小さい人がコルトピさん。ウボォーさんとはちょっと違う意味で大きい男の人がフランクリンさん。包帯ぐるぐるの細い男の人がボノレノフさんで、こないだ入ったばっかりっていうピエロみたいなかっこした男の人がヒソカさん。
 これと、また出かけちゃったけどフィンクスさん、フェイタンさん、シャルナークさん、ウボォーギンさん、それから今隣にいてくれるマチさん。
 みんなで、12人。クロロさんを合わせて、13人。
 これが、メンバーの全部なんだって。
「なんでさ。メンバーの選定は団長権限。その団長が置いておくって云ってるんだから問題ないだろ?」
 今日は、わたしが、ここでいろいろ教えてくださいってお願いした次の日だ。
 昨日はあのあと、戻ってきたマチさんから着替えをもらって、やっと、お風呂に入ることできた。……もう何日入ってなかったのか、考えるのもヤ。気がついたら体中べたべただし、トレーナーとジーパンは赤かったり黒かったり茶色だったり破れてたり。あぶなく、お風呂で寝かけちゃって、心配して覗いてくれたマチさんに引き上げられたりもした。
 それで洋服は、そんなになっちゃったから、ゴミに出すことになった。
 だから今着てるのは、マチさんやシャルナークさんたちが用意してきてくれた、こっちの世界のお洋服。ううん、洋服っていうか、着物? ちょっとくらいサイズが違っても大丈夫だからってことで、マチさんのと似てる感じの着物。足はスパッツじゃなくて、ハーフパンツみたいなの。靴は足首の少し上くらいまであるブーツ。革でできてるみたいだけど、やわらかくて軽くて歩きやすい。
「メンバーじゃねえだろが」
 ちょっとムッとした声のマチさんに、ノブナガさんはそう答えた。
「こんなの置いてても邪魔になるだけだ」
「蹴り飛ばすかもしれねえな」
 と云ってるフランクリンさんは、でも、ノブナガさんみたいに不機嫌じゃない。なんか、おもしろがってる感じがする。
「あたしは別にいいけど。足元ちゃんと見るから」
「そういう問題?」
 シズクさんがそう云って、パクノダさんにつつかれてる。なんだか楽しそう。
 コルトピさんとボノレノフさんは、どう思ってるのかわからない。コルトピさんんは長く伸ばした髪の間からかたっぽの目が見えてるだけだし、ボノレノフさんは全身――もちろん顔まで包帯で、どんな顔してるのか見えないから。
 ……えっと。それで、最後のヒソカさん。
 一人離れたとこにいて、わたしの方見てるんだけど、な、なんていうのかな。目を合わせるの怖いような気がする、っていうか、風が流れてきてる、っていうか――
「だいたい、ここに残していくときは? 何やらかすか判ったもんじゃない」
 わたしはたぶん、いたずら盛りの猫か何かと同じに思われてるみたい。
 変なの触ったり壁に傷つけたりとか、しないつもりなんだけど。
「あたしか団長が相手してるよ。あんたに子守させる気はないから安心しな」
「こっちから願い下げだ!」
 ふん、って云うマチさんに怒鳴るノブナガさん。
 そこへ、
「――団長が?」
 ヒソカさんが、割り込んできた。
 一歩。ヒソカさんが前に出て、その分、風が、――あわわ。ひ、ひやっこい。
 ヒソカさんはクロロさんの方見てて、だから、方向もわたしのほうじゃないんだけど、動いたから風が動いて、わ、わわわ。
「ボクより新参の、このコのほうが大事なんだ? へえ◆」
「……ヒソカよりかわいげはあるわよ」
「同感」
「♠」
 目を細めてクロロさんに話しかけるヒソカさんへ、パクノダさんがつっこんだ。シズクさんがうなずいて、他の人たちが小さくふきだす。
 そして云われたクロロさんはっていうと、
「大事というか――面白い、だな。あと、放逐した先で死なせるわけにもいかん」
「それを大事にしてるっていうんじゃないの?」
「それで死んだら死んだだ」
 それを大事にしてるとはいわない。と、思う。
 でも、急に転がり込んだ子供を大事にしようって感じの人たちじゃないし、これくらいのほうが、きっと自然。
 ――マチさんは、けっこう、何かと手を焼いてくれてるけど。それをどうしてですかって朝訊いたら、「妹がいたらこんなかなって思って」って、そっぽむいて教えてくれた。……お姉さんといたらこんなかな、って、わたしも思った。
 ごめんね、お姉さん。少し、重ねてる。
「自助努力を惜しまんくらいの気概はある。暫く様子を見て、それで納得がいかないならオレに云え」
 ノブナガさんとヒソカさんを交互に見て、クロロさんはそう云った。
 それが、お話の最後。さすが団長さん。

Back // Next


TOP