Episode34.
で、その後は、解散。
基本的に、旅団の人たちが集まるのは、仕事の時とか暇をもてあましたとか、そういう感じのときだけらしい。だから、フランクリンさんたちも元の場所(?)に帰るって云って出て行って、わたしはそれを見送った。
出入り口で手を振ってるわたしを、フランクリンさんは大きな手をゆっくり振り返して応えてくれた。
……で。
『暫く様子を見る』ってクロロさんの言葉どおり――残ったのは、クロロさんとマチさん、パクノダさん。それに、ノブナガさんとヒソカさん。加えて、わたし。
…………
どうしよう。
正直云っちゃって、あんまり、中に戻りたくない、かも。
ちょっと口元がひきつるような感じをもてあましたまま、わたし、しばらく、出入り口のところに突っ立ったままだった。
そしたら、
「どうしたの?」
「きゃ!」
ぽん、と肩に手が置かれて、びっくり。
振り返ったら、パクノダさんとマチさんが、わたしの後ろにやってきてた。
……わー。
さっきも思ったけど、パクノダさんってお洋服、ほんとうに大胆。恥ずかしくないのかな、ていうか、冬は寒くないのかな。冬は別の着るのかな?
「何か困ったことでもあった?」
「あ、な、ないです」
あわてて答えたら、パクノダさんは、ちょっとおかしそうに笑う。
「無理しなくていいのよ。まだ家族が恋しい年頃でしょう?」
「あ、――そ、そんなことは」
ないです、って、云おうとしたわたしは、でも、そこで言葉を詰まらせてしまった。
喉が痛くなったのでもないし、誰かに口をふさがれたのでもない。
――パクノダさんが、目を、まん丸にしてたから。驚いた。
どうしたんだろう。
パクノダさんは、じいっとわたしを見たまま、動かない。
「パク?」
ぽかんとしたまま見上げてたら、様子がおかしいってことに気づいたらしいマチさんが、パクノダさんを覗き込んだ。
そしたら、それでパクノダさんは、はっとした様子でまたたきを何回か。
「マチ。この子頼むわ」
「へ? あ、ああ、うん?」
ぽいっ、と、マチさんに渡されるわたし。勢いあまってけんけん。両手をぶんぶん振り回して立ち直ろうとしてる途中で、マチさんはわたしをキャッチした。
――あ。
あったかい。
半袖の着物は、腕がむき出し。受け止められたときの体勢で、頬に当たるマチさんの腕は、あったかい。……お母さん、に、似てるかも。ううん、まだずっと若いから、お母さんと一緒にしたら失礼かな。そしたら――お姉さん、かな。
ごめん。ごめんね、お姉さん。きっときっと、似てても違う人なのにね。
お姉さん。
お姉さんがいたら、こんなふうに、お姉さんのあったかさを、わたし、知っていたのかな。
「あ」
「うん?」
「ご、ごめんなさい!」
今度は、わたしがはっとする番だった。ぼーっとしてたせいなのか何なのか、いつの間にかマチさんにくっつきっぱなし。
でも、急いで離れようとしたら、マチさんが、
「やっと子供っぽくなった」
って云って、ふわっ、って、わたしのこと持ちあげた。
「マ、マチさん!?」
「のんびりしてる暇はないだろ? ノブナガとヒソカに、あんたのこと認めさせなくちゃね」
「で……でも、どうやって?」
たぶんわたしがいくら暴れても、マチさんから飛び降りることは出来ないだろう。シャルナークさんやイルミさんで、そういうの、いやってほど学習した。
そして質問したわたしに、マチさんはすぐに答えてくれる。
「そうだね。まずはあんたの基礎体力から見てみようか」
――ぶっ倒れるまでマラソン。(先導者:マチさん)
っていう指令が出されるのは、そのすぐあとのことだった。