Episode54.

 輝きの向こうに、道がひとつ。
 コンクリート。ブロック塀。走る車。植木。白線。電柱。ポスター。
 見慣れた道。
 毎日歩く道。
 学校への道。

 帰りたいって。
 ずっとずうっと。
 ここに来てから、いつも。
 ――帰りたいって。

 あのときも。
 何より、強く、考えた。


 だからお魚はそのために。

 この世界のわたしを丸ごと食べて。
 向こうへ吐き出すそのために。
 男の人たちに叩かれてすごく痛かったから、食べられても痛みがないように、つくった。
 他の人たちがただ食べられるだけなのは、ここの世界の人だからだ。
 わたしの帰る場所は、この世界の人たちの帰る場所じゃないから。だから、他の人たちはみんな、ただ、行く場所なくして砕かれてしまう。
 そう。
 あのとき、わたしがちゃんと最後まで起きていられたら、お魚はちゃんとわたしを向こうに帰してくれるはずだった。

 それが、お魚。わたしがつくったお魚。
 わたしのために、わたしが。
 おうちに帰りたくて、帰りたくて。帰るために、わたしが、――叶えたわたしのちから――!


「おいで!!」

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