Episode57.
帰りたい。帰りたい。
お父さんとお母さんの所に。
大好きな家に。大好きな場所に。
帰って眠って学校に行って、みんなと一緒にお勉強して、遊んで、そして帰ってご飯を食べて、眠って。学校に。家に。
わたしのいた場所に。
帰らなきゃ。
帰らなきゃ。
何か引きとめようとしたマチさんを振り切って、わたし、クロロさんを追いかけた。
いらいらしてる、ぴりぴりしてる、黒い、夜が騒ぐ風。ドアのとこからすごく濃く残ってるそれを追いかけていくのはすごく簡単。
クロロさんはわたしより歩くのがすごく早いけど、でも、わたしが走っていけばきっと追いつける。
それに、クロロさんは、わたしみたいな子どもから逃げるのって、好きじゃないはずだ。だいたい、男の子っていうのは、逃げるっていうのを嫌うもの。大きくなってもそれは同じだと思う。フィンクスさんとかだって、きっとそうだ。
「あら、?」
「しつれいしますっ」
パクノダさんの横を通り抜けて、
「何してるね?」
「走ってます!」
フェイタンさんとすれ違って、
「お。よー、久しぶりだな。元気してたか?」
「おひさしぶりです、元気です、フィンクスさんも元気だったらよかったです!」
「……をーい?」
お仕事が終わってひまをつぶしにきたんだろうフィンクスさんが、ちょっとさみしそうにビニール袋をぶらぶらさせてるのを背中にしちゃって、
どんどん濃くなる黒い風を、追いかけて。
――ばたん!
そのドアを開けたわたしの髪を、強い風がまきあげてった。
でも、それ以上に強くて黒い風の人を。やっと見つけた。