Episode65.
「……だんちょには関係ないのですよ」まったくもう。
ぷんすかとそっぽ向いたわたしの頭に、ぽすん、と何か置かれた。
「?」
見上げたら、それは薄茶色の封筒。
持ってる手の主ことクロロさんが、いつもどおりの無表情でこう云った。
「ヒソカが、今年またハンター試験を受けに行くのは知ってるな?」
「あ、はい」
そういえば、そうだった。
ヒソカさんは去年も受けに行ったんだけど、試験管の人を半殺しにして不合格になっちゃったんだ。一緒に行ったわたしが知らない間にそんなことになってたものだから、試験が終わった後に不合格の理由を訊いて、すっごく驚いた。何を考えてるんだろうあの人は。
ともあれ、今年はそのリベンジなんだって、こないだ嬉しそうに話してた。
「その回の試験、おまえも行って来い」
「え?」
きょとん。
「でもわたし、去年合格しました」
ヒソカさんがヒソカさんでそんなことしてる間に、わたし、なんだかどうにか合格した。
旅団の人たちが訓練っていって仕掛けてきたあれこれより随分楽ちんだったし、ヒソカさんだって真面目にやってたら去年でちゃんと合格したはずだ。
念の裏試験にしたって、もう使えるからってことでオッケイ出ちゃったし。
それが、まさか協会の手違いで取消しになっちゃったとか?
どきどきとしながらそう訊くと、クロロさんが、また、封筒をわたしの頭にぽすんぽすん。読めってことみたい。
とりあえず、『両手で』それを受け取って――あれ、この封筒口が開いてる。
クロロさん、もう読んだのかな。だったらもったいぶらずに教えてくれたらいいのに。
なんて思いながら、封筒から書類を引っ張り出した。
「…………」
そして、わたしの目は点になる。
『・殿』こっち式の宛名から始まって、
『来期ハンター試験にて試験官を務めてもらうため、今期開催の試験に補助官として参加のこと』
『当日の流れ:(1)一般受験者として参加、(2)数個の試験をクリア、(3)適度な頃合で離脱、(4)試験官の采配及び手際をよく見て学び、後日レポートを提出、(5)バナナはおやつに含まない』
用紙の右下には、まだ顔も知らないハンター協会長の直筆署名と公印が、存在をどどーんと主張していた。
ここまでが、わたしの始まり。
そして
ここからが、――はじまり。