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 あれは誰だ?
 彼女は誰だ?
 衛宮士郎の隣に佇むあの少女は、いったいどんな存在なのだ――?

 思い返せば校庭での戦いのときから、それに気づくべきだった。

 記憶にはひとつ。
 現実にはふたつ。

 逃げ出した人影の相違。

 それを当然とし、ふたつめの影を気にかけていた遠坂凛。

 捜索を開始した瞬間、急速に薄れていったランサーの気配。

 一度殺そうとした目撃者を放っておくわけがないと走り出した凛を追って辿り着いたこの屋敷に在った、信じられないほど穏やかな空気。

 数え上げればとめどない、矛盾と相違。

 気づく要素はいくらでもあった。
 気づくべき者が気づけなかっただけだ。

 だが、その存在を確認した瞬間、それらはすべて些細なことに成り下がった。

 望みは何だ。
 願いは何だ。
 この磨耗しきった自身を支えてきた、たったひとつの願望を、今叶えずして何とする?

 “彼女”はまだ現界していない。それだけは判った。
 まだ強化の魔術のみを求める、“奴”を守るものはない。
 ならばこの瞬間こそが千載一遇の好機である。

 他に何をも望みはしない。
 ただこの一瞬だけを、オレは――――

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