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「――“壊れた幻想”」

 土蔵から大きく飛び退くランサーの腕のなかで、それを聞いた。
 それは、わたしが先刻やったことをもっと圧縮してもっと力任せにしてもっと問答無用に行うことなんだと判った。
 それからもうひとつ。
 アーチャーの放ったあの“矢”こそが、その呪文によって“壊れる”のだと。
 どちらも確定。
 どちらも必定。
 あの赤い弓兵は、もともとこれこそを狙っていたのだ――!

 ――そうして。
 静まり返った闇を切り裂き、炎が生まれ、爆音が響く。


 ほのお。
 まっかなほのお。
 てんまでもこがせとたけりくるう、――ごうか。

「士郎――――!!」
「ちょっ、おい、こら暴れるな!」

 ほのお。
 ぐれんのごうか。
 みあげたそらは――あかく?

 ああ。
 わたしたちは、このなかを。
 たくさんの、■■を。
 ■■■て、■■■■た。

 だのに。
 衛宮は、ここにいるのに。
 どうして、衛宮士郎は、あそこからでてこない――――?

 身体にまわされたランサーの腕を、必死になって振り解く。いや、振りほどこうとしてるんだけどさせてくれない。
「じっとしろって! あのなかに突っ込む気か!?」
「やかましいっ!!」
 離さないと今度こそ、存在ごと解ききってやる。
 そんな物騒な決意とともに、抗議の声を紡いだ瞬間、
「ッ!?」
 何故か、ランサーは自らわたしを放り出した。
「うぎゃっ!?」
 力んでた分、反応が遅れる。
 受身もとれずに落下したけど、ランサー、ちゃんと考えてくれたらしい。背中から突っ込んだのは、比較的葉がたくさん茂った庭の茂み。
 ばきばきばき、と枝を折りまくって、わたしの身体は茂みに埋まる。ああもう、情けないやら笑えるやら。ちくちく刺さる枝を払って、とにかく顔だけ突き出して。

「そこから動くなッ!」

 刹那発されたランサーの声に。
 声の方向で響いた激突音に。
 さっきまで彼に抱いてた怒りもどこへやら、

「……え?」
「な……」
「ちょっと……まさか……!?」

 ぽかん、と、口を開けて固まった。――ランサー、そして遠坂さん共々。

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