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 ……遠い、遠い昔のことだ。
 切嗣はそのとき、もう判っていたのだろう。
 ■■■■■は、いないほうがいいんだってことに。
 だって、そんな存在が必要なのは、誰かが哀しむ場所。
 ■■■■■を目指すということは、そんな場所を目指すということ。
 その矛盾。
 その両面。
 誰かを■■ために在るはずの■■■■■は、誰かを■■ことでしかその存在を証明できない。
 だって、■■は大勢のしあわせのためのものであって、すべてのしあわせのためのものじゃない。
 ■■■■■が■■たものの■■を、ただ刈り取って。
 大勢の望んだしあわせを、引き寄せるだけ。


 ――それは矛盾なんだって、僕も判ってた。


 百ではなく、九十九。
 bestではなくbetter more。


 ――それが、■■■■■。


 ああ、それは正しいのだろう。
 ひとは完璧ではない。
 完璧があるなら、それはもうひとじゃない。
 完璧でない生き物が、完璧を手にすることは出来ないんだろうから。

 だから。
 人である身に出来る最善として、その道を選んだ衛宮切嗣のことを、間違ってるとは思わない。

 だけど。
 その道を歩んだ衛宮切嗣は、子供たちに云ったのだ。

“僕が、信じているから”

 いのるように、ねがうように。
 うたうように、ささやくように。


 ――――自らの描いたゆめを、越えてくれと。


 子供たちは、そう約束して。
 だから、切嗣は笑った。

 命の尽きる最期の瞬間、嬉しそうに、しあわせそうに――――いつか望んだとおいばしょが、その目の前にあるかのように。
 子供たちを抱きしめて、彼は、ただ無心に微笑んでいたのだ――

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