- 帰り道は、行きとは違って和気藹々としたものだった。 黄色い雨合羽といまいち不似合いな浴衣は浮いていたけれど、なんだかそれにも慣れてきた。人間の順応力恐るべし。 まあ、そういった外的要素があまり気にならなかったのは、ひとえにと遠坂とセイバーが結構仲良く話し込んでたからだろう。 俺がそうであるみたいに、も、今の遠坂のほうが何かと話しかけやすくあるようだ。遠坂も、わりかし気楽にそのやりとりに興じてる。セイバーは水を向けられたときに軽く返答するくらいだけど、それなりに楽しんでるんだろうとは思う。 しかし、なんだな。 同じくらいの身長のとセイバー、ちょっと抜き出た遠坂。 そんな構図を後ろから見てると、なんだか、妹ふたりを従えて歩く姉って感じだ。 ――うん、悪くない。 髪の色的にも、金髪のセイバーと薄茶色ので、並んだ後ろ姿に違和感ないし。 ただ―― 「何にやついてんだ、坊主?」 うりうり。と、俺のわき腹をつっついてランサーが笑った。 今のこいつには、教会で見せた凄みの欠片もない。 「にやついてなんかないぞ」 「いや、しっかりにやついてたな。で、誰を見てたんだ?」 否定はさらなる否定で返される。 「別に。誰かを特定して見てたわけじゃない」 ――まあ、強いて云うならかな。 そう云ったら、 「……」 あからさまに、げんなりした顔をされた。 なんでさ。 家族ってのはいちばん身近な存在だし、とはもう十年来の付き合いだ。ぱっと目が行ったって、別におかしかないだろうに。 ――そうしてそこに辿り着く。 遠坂の屋敷と、衛宮の屋敷。 それぞれの家に続く分かれ道。帰る場所が違うのだから、そして、ここまで共にやってきたのだから、挨拶をすべく足を止めたのは至極自然なことであった。 が。 「それじゃ。衛宮くん、衛宮さん」 分かれ道のほうへと足を踏み出した遠坂のセリフは、 「――今度逢うときは敵同士ね」 ちょっと。 予想してなかった、“挨拶”だったりしたもんで。 「「え?」」 衛宮のきょうだいは、そろいもそろって、間抜けな顔で立ち尽くしてしまったのであった。 |