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 何故だかふと、こんなことを思ってしまった。
 目の前で戯れるマスターたちを見て、その傍らに佇む自分たちを思って、少し離れた場所で苦笑してるもう一組の参加者を見て。
「この聖杯戦争……単に聖杯を奪い合うだけじゃ終わりそうにないな」
 ――先手を打たれた。
「そうですね」
 蒼い槍兵のことばに、セイバーは淡々と返す。
 何しろ、七組の参加者のうちの三組が、根幹に定められたルールを叩き壊そうとしているのだ。
 はじまりは二組。今は三組。
 はて、最後には七となるか零となるか。
 彼らが選んだのは、そういう道。
「ま、俺は戦いが楽しめりゃいいし」、
 軽く肩をすくめて、ランサーが笑う。
「――ついでに、このいけすかねえやり方を壊すっていうのも気に入った」
 だが、あんたはどうなんだ?
 見下ろす赤い双眸は、セイバーを試しているのだろう。
「何をどうひっくり返しても、あの坊主やの気にいらねえ方法でしか聖杯が現界しないってんなら――それでも、あんたはそれを欲しいと思うのか?」
「愚問です、ランサー」
 元々、ただ聖杯を欲して現界したこの身。
 目的とするものがその道の果てにたしかにあるのなら、我が身はその場所をこそ目指して突き進むのみである。

「――ふーん」
「何か?」

 意味ありげな含み笑いを零すランサーを、セイバーはちらりと睨みつけた。
「別に、何も」
 明後日を見てうそぶく槍兵。
 そのつかみ所のない様子に、彼女は追及を諦めた。自分も大概の窮地をくぐりぬけたとは思うが、この相手もなかなかの――たとえその真名が明らかになっていなくとも――修羅道を通ってきたのだと直感したせいもある。
 だが、一番の理由はそれではなく。

「お話は終わり?」

 唐突に、そこに佇む一行へと投げかけられた幼い少女の声に、ただごとでない危機感を覚えたからであった。

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